ウェブデザイナー職業人講話
早いもので、いよいよ2020年に突入しました。今回は、某県立高校へ「職業人講話」をさせていただく機会をいただいたので、「ウェブ業界で就職する」というタイトルで、解説させていただこうと思います。
IT(アイティ)ってよく聞きますよね。
ITは、インフォメーション・テクノロジー(Information Technology)の略語になります。みなさんの手元にあるスマートフォンを始め、今や暮らしの中でITは切り離せない存在となっています。インフォメーション・テクノロジーは、「情報技術」を意味しています。情報は、無形財といって、形がない財形です。スマートフォンの中に、たくさんの情報が詰まっていますね。ITのお仕事は、あらゆる情報を処理したり、人に伝えたりするのです。
当時のインターネット接続時のダイヤルアップ音
わたしがはじめてITに触れたのは、1990年代の終わりのころでした。インターネットが今ほど普及しておらず、電話の線をパソコンに挿してインターネットに繋げていました。その頃は、インターネットを使うと電話が使えなくなる時代でした。もちろん回線速度やパソコンの起動も信じられないくらい遅くて、無線でネットが繋がる時代になるとは想像もできなかったです。
初めてインターネットの世界に触れたとき、ほんとうに衝撃的でした。テレビでは発信できない情報の世界が、モニターの奥で繰り広げられていました。なんて素晴らしいのだろう、そしてその美しさに感動でした。ウェブを学ぶことで、自分もモニターの奥から発信側にもなることができる!ことを知った時、もっともっと勉強しようと思いました。
今まで、数えきれない数のホームページを提供し、人や企業に貢献してきました。ウェブデザイナーは、多くの人に驚くほどの影響を与えることのできる職業です。
ウェブデザイナーをお勧めする理由
IT業界の仕事、といってもシステムエンジニアを始め、専門技術は多岐に渡ります。誰でも、最初は初心者です。パソコン初心者にとって、ウェブデザイナーは、最も簡単でトライしやすい専門技術です。英語や数学が苦手でも、一から学ぶことができます。パソコン1台あれば、たった一人で完結し、世界中の人に見てもらうことができるのです。
また、身近にあるお店や会社のホームページは必ず必要なので、「ホームページが作れるひとはいませんか?」と声がかかる機会がとても多いです。その技術を持っていると一生重宝します。老若男女問わず手に職をつけるということは、ほんとうに素晴らしいことです。
Webデザイナーになるための資格
Webデザイナーになるために、資格は必要ですか?とよく聞かれますが、基本的に資格は必要ありません。資格は、あなたがどこまで専門知識を理解しているかを分かってもらうための目安に過ぎません。資格よりも、実務経験や実績が重要視される業界なので、逆に資格はあっても、経験や実績がなければ、採用が難しい業界と言えます。
ですから、実務経験がない学生さんは「ポートフォリオ」など作品をしっかり作って就職活動に挑みます。採用後は、就職先それぞれしっかり研修期間があり、新卒から業界で働くことが可能となります。
実績を積む前に、まず専門技術が必要なので、特化した学習をする必要があります。勉強の目安となる資格検定をいくつか挙げておきますので、学習してみてください。
基本的なパソコン技術の目安となる資格
ウェブデザイナーの目安となる資格
- サーティファイ認定試験
▶ Webクリエイター能力認定試験 - ウェブデザイン技能士
▶ ウェブデザイン技能検定 - なりたい自分を彩る知識。
▶ 色彩検定
中途採用のほうが有利
資格よりも、実務経験が重視される業界ですから、中途採用のほうが有利な点も挙げられます。転職の際は、今までどんな仕事に携わってきたか、どんなサイト制作を手がけてきたかをしっかりアピールすることです。
Webデザイナーになるための就活
学歴は問われません。
高卒から、ウェブデザイナーになれますか?という質問もよくあります。基本的には、学歴は問われないので、高卒からでもウェブデザイナーになれます。但し、専門技術が必要です。前述の通り、実務経験が最も重要なので、高校卒業後に働きたいのであれば、学生時代からアルバイトで経験を積み、正社員を目指すほうがいいでしょう。
専門技術の習得は、専門学校で約2-3年かかります。当然ですが、学歴を重視する大手企業もありますから、大卒の多くの人も、IT業界への就活しています。その点は把握しておいてください。
就職先は、大手企業をはじめ中小企業、個人事務所、ネット通販会社などたくさん溢れています。技術より人柄を重視される会社も多く、就活においてコミュニケーション力やアルバイト経験なども、重要です。
影響力を持った魅力のある人が、評価される時代
IT業界は、高卒の社長さんもたくさんおられます。これからの時代は、学歴ではなく「人間力」が試されていきます。YouTubeやTwitterを使ったインフルエンサーと呼ばれる人が活躍しているのを知っていますか?
人から支持され、影響力を持った魅力のある人が、評価されていきます。その鍵は「発信力」です。誰もが、世界中に発信する自由があるのです。ウェブの力を最大限に生かし、人間力を持ったひとがこれからの世代の勝ち組となるでしょう。
パソコンは、最低限でも使えるようになっておく
最近は、パソコンを持っていない、使えない若者が増えています。ITの仕事は、パソコンを使わないと出来ません。まずは最低限、パソコンは使えるようになっておきましょう。普段の暮らしはスマートフォンがあれば、十分かもしれませんが、ITに限らずほとんどの仕事は、パソコンが必要なので、基本的な操作は、使えるようになっておかなければなりません。
業界で求められる能力
聞く・話す・表現する
ウェブデザイン制作といっても、仕事となると「お客さん」が必ずいます。お客さんがいないと、報酬(お給料)がもらえません。ゼロからホームページを作るために、依頼されるお客さんとの商談(話し合い)が、必要になります。IT業界では、このお客さんのことを、「依頼者=クライアント」と呼びます。クライアントは、企業・官庁、ショップ・個人と様々です。
陳列されているパン屋さんのパンを売るのとは違い、依頼されてから作るわけですから、とても難しいのです。基本的に、オーダー(注文)をもらってから作るのです。クライアントとの商談は、直接会って話したり、メールや電話でもやり取りが行われます。最近では、ネットを介してビデオ会議などを使う会社も増え、海外や遠方からの打ち合わせも可能になりました。
コミュニケーション能力
人の話を聞けない人がたまにいます。話す側からすると、「あっ、この人はわたしの話をまったく聞いてないな」ということは、すぐわかります。人の話が聞けない人、自分の意見を伝えられない人は、人との信頼関係を築くことが難しくなります。
会社は、連携プレーですから、クライアントや同じ仲間として働く社員たちとうまくコミュニケーションを交わしていかなけれななりません。入社当初は、クライアントとの商談は、先輩がしてくれるかもしれませんが、どんな職場でもコミュニケーションを交わさないと仕事になりません。IT業界に限らず大切なのは、相手の話を「しっかり聞く姿勢」です。部活やアルバイトを通して、体験していきましょう。
文章能力
「文章にする能力」これから最も求められるのは、文章能力です。ウェブは、画像・動画・そしてテキストを中心に発信していく媒体です。近年は、ブログ型のウェブサイトが増え、テキストを打つ・(書く)・表現する・伝える能力=文章力が非常に重要になってきました。ウェブライターという肩書きも珍しくありません。読みやすさ、表現、伝えやすさ、など意識しながら、あらゆるウェブサイトを研究し、本を読む習慣をつけることで文章能力は身についていきます。
連想能力
「連想能力」は、わたしが長年この業界で働いてきた上で、とても必要だと感じている能力です。例えば、「いちご」という単語が一つあった場合、「果物、赤い、丸い、かわいい、イチゴ狩り、ショートケーキ、いちご大福、ストロベリー、ソフトクリーム、いちごミルク、」など思いつくままどんどんイメージを膨らませていくのです。1つの単語に対し、連想できるものや同じ仲間、関連する単語をどんどん広げていきます。その形状や、色、匂いなども浮かんでくるようなトレーニングがいいと思います。デザート、スイーツ、おやつなど意味は似ていても、単語の響きから与える印象は変わってきます。
関連する単語のことを、「キーワード」といいます。トレーニング次第で、柔らかい考え方ができるようになっていきます。連想ゲームは、電車の中、布団の中、いつでもどこでも出来ます。ウェブは、イメージを形にする仕事なので、連想や想像を膨らませることができる能力を持つということは、クリエイターにとって重要です。友達同士で、しりとりなどを試すと、どんどん単語知識が増えるでしょう。
業界で求められる人材
今まで、多くの学生を見てきましたが、ウェブデザイナーの才能というのは特にないと思っています。私自身、学生時代は勉強も嫌いでしたし、幼い頃は絵を描くのが好きでしたが、親に止められ描くのを辞めてしまいました。
反復やトレーニングを重ね、向上心が大切ですのでこちらで書いている通り素直な人柄であることが、重要なのです。
ウェブデザイナーは絵が描けなくてもなれます。
大切なのは、あなた自身がいかに毎日を楽しく過ごしているか、何に感動しているかということです。
ウェブデザイナーに向いている人
何かに打ち込める人、なにかひとつでもいいので、夢中になってしまう人、さらに洞察力や観察力がある人が向いています。クライアントの要望をカタチにし、受け取る側(ユーザーと言います。)の真意も想定しなければなりません。
商品やサービスをアピールすることが、仕事なので、売る人と買う人の相互の立場になって物事を考えるのです。ですから、人として当たり前のことですが、「人の気持ちがわかる人」が、モノづくりの基本です。
ほんのちっぽけなことでも、発見したり、感動したり、疑問を持ったりするひとが向いています。普段の生活の中で、あなた自身は、何が嬉しくて、どんなことに魅力を感じるのか。普段の何気ない感情の変化を自分でしっかり把握できることから、始めてみましょう。そこが、人として、未来のAI(人工知能)に負けないポイントです。人の感情は、人にしかわかりませんからね。
妄想や空想が好きな人も、ウェブデザイナーに向いています。コレクション癖がある、何かを集めている、こだわりがある人ですね。楽しいことを企画するのが好き、毎日をワクワク過ごしている人は、きっとウェブデザインが好きになるでしょう。色彩感覚、躍動感、空間認識も大事なので、普段からファッションの組み合わせを楽しんだり、オシャレを意識している人はデザイン力を発揮します。
次世代のIT業界を担うのは、きみだ
IT業界は、アップデートが激しく勉強を重ねていかなければなりません。また、24時間365日発信が絶えることがなく、遅い時間まで仕事をすることも珍しくありません。20代〜30代の人が最も業界の一線を担っています。体力があり、健康で向上心のあるきみの活躍が、次世代のITを率いていくのです。頑張ってください。
チコちゃんは、知っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた!